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第60話 光に照らされる君の横顔は世界一綺麗で

Author: 岩瀬れん
last update Last Updated: 2025-07-11 18:49:23

クリスマスライブから6日。あの日以来、天音くんとは会っていない。

と、言うのも私もアルバイトに勤しみ、天音くんも年末は複数の歌番組出演で忙しかったからである。

それに直接顔を合わせていないだけで、定期的にメッセージアプリに連絡は来ているのだ。

今日の20時から歌番組の生放送あるから見て。とか、差し入れでもらった高級あんぱん。とか、個人トークは彼のSNS化している。voyageの公式サイトで同じように呟いたら、ファンの子ももっと喜ぶのにな。そう思いながらも口には出さず、私もちまちまと返事を返していた。

まぁとにかく、特にここ数日は連絡がマメなのだ。

「ふふ、」

それが何だか可愛く思えて、メッセージが来るたびに頰が緩んでしまうがいる。猫が懐いてくれた気分である。猫みたい、だなんてそんなこと本人には言えないけれど。

過去のやり取りをスクロールして見返していると、丁度「今何してるの?」と天音くんからメッセージが届いた。

「えっと・・・家でごろごろしてるよ、っと」

そう、私はひとりでごろごろしている。

ちなみに今日は12月31日の大晦日。両親はニューヨークにいる為、今年の年越しはひとりなのだ。別に寂しくはないけれど、ひとりだからかもうすぐ今年が終わってしまう実感が全くない。

未だ、あのクリスマスライブの余韻に浸っていた。

するとぽこんとトーク画面に現れたスタンプ。

くまさんが「羨ましい」としょんぼりしている。そう言いながらも仕事が「嫌だ」と言わないのは、天音くんらしい。

そんな彼は今日の22時から事務所をあげてのカウントダウンライブがある。それも、テレビで生放送をするのだ。連絡が返ってくるということは、おそらく今は休憩中なのだろう。

「今日、家でカウントダウンライブ見るね」と送ると、それはすぐに既読がついて「頑張る」と返信が来た。

そして続くようにもう1つのメッセージが届く。

「一緒に初日の出見に行こう」

* * *

年明けとはあっという間なものである。生放送ライブを見ていたら、いつの間にか年が明ける1分前になっていて、心の準備ができる前に画面の向こうで「ハッピーニューイヤー!」とアイドルたちが叫んでいた。

今は除夜の鐘をBGMにしながら、約束の時間の午前5時45分を待っている。

カウントダウンライブが終わって直ぐに「寝ないでよ」と連絡が来ていたけど、こんな日は逆に目が冴
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